「で、こんなところで待ち伏せして、何の用?」



そう。

このタイミングでの声かけ。

用事なしで、朝のあいさつとも思えない。

だいたい、おはようの一言もないし。



「……あの、さあ」



言いにくそうな、叶太くん。

聞いてはみたけど、要件は明らか。

だから、助け船を出すことにした。



「って、聞くまでもなく、決まってるか」



陽菜が、わたしのところで、お弁当を食べるようになって、もう1ヶ月近い。

叶太くんが、それを良しとしていないのは、見ていて、よく分かる。

だいたい、この時間。

8時20分。

普通なら、陽菜を迎えに行って、席で陽菜とおしゃべりしてる時間。

わたしは、朝練があるから普段は見かけないけど、休み時間の様子を見ていれば、想像がつく。



「陽菜のことでしょ?」

「あ、うん」



陽菜とは、初等部からのつきあい。



いつもニコニコ笑ってる、優しい子。

ふわふわの長い髪はちょっと茶色っぽくて。

とにかく、抜けるように色が白くて。

折れそうなくらいに華奢で。

目が大きくて、とても可愛い顔をしている。

まさに、守ってあげたいお姫さまナンバー1みたいな女の子。



陽菜の王子さまに立候補したい男子は、たぶん、山ほどいる。

だけど、既に、叶太くんがいるから、誰も名乗りを上げられないでいる。



その叶太くんが、真顔で言った。



「最近、ハルが変なんだ」