羽鳥先輩は、膝に手を当てて、よいしょ、と立ち上がり、空を見た。



「行こうか?」



小さく、うなずく。



「分かれ道まで、ね」



先輩はほほえみ、わたしの鞄を手に取った。



カナとしか歩けない。

だけど、裏口への道じゃなければ……。



「あの……ありがとうございます」

「どういたしまして」



先輩は、嬉しそうに目を細めると、行こうか、と、ゆっくり歩き出した。



カナより細い先輩。

顔つきもぜんぜん違うし、タイプもまるで違う。



だけど。



背の高さが、ほとんどカナと同じだった。

ゆっくりと、わたしに合わせて歩いてくれるのも。



先輩は何も言わない。

だけど、さり気なく、わたしの歩く速さを気にかけてくれている気配を感じた。



穏やかで、優しい気遣いが、心地よかった。