「飛躍しすぎだ! バカ広瀬っ!」
だけど、この慌て方、もしかして……。
オレを半ば羽交い締めにした腕をほどきながら、オレは斎藤の目を見る。
「別に、オレ、偏見ないよ?」
その瞬間、斎藤は口をポカンと開けて固まった。
ん?
なんか、違ってた?
「……おーい。拓斗くーん」
手をひらひらっと斎藤の前にかざす。
徐々に斎藤の顔に表情が戻り、赤くなり、それから、盛大に吠えた。
「おまえ、いい加減にしろよ!! 誰が、男が好きだって!?」
「……あ、違ってた?」
「違うに決まっとろーが!!」
「いや、そんなの分かんないし」
「せめて、オレの言うこと、聞けよ」
斎藤がオレの肩をがしっと両手で掴んだ。
「いや、だから、聞いたじゃん」
「……なにを?」
「女の子に興味ないって」
「女の子に興味なかったら、男が好きってか? おかしいだろ、それ!」
「……ああ、まあ、そうかも?」
「そうかもじゃ、ないって!!」
はあああぁぁぁ、と
斎藤は、盛大なため息を吐いた。
「あーもう。ハルちゃん一筋の広瀬には、分かんないかもな」
「え? なにが?」
「世の中には、女の子に夢中で、女の子しか目に入ってないヤツばっかじゃないってこと」
ゴンと頭を殴られる。
いて。
ってか、オレは女の子に夢中な訳じゃない。
「オレは、ハルが好きなだけで、他の女なんて、目に入ってないぞ!」
斎藤は更に冷たい視線をオレによこした。