それから少しして、その日のカウンター当番が終わった。

校舎に向かって、羽鳥先輩と一緒に渡り廊下を歩く。



「きっと、さ」



羽鳥先輩が、前振りなく、話し始めた。



「友だちなんて、作ろうと思って作るものじゃないし、親友なんてなろうと思ってなるものでもない」



作ろうと思って作るものじゃない。

なろうと思ってなるものでもない。



先輩の言葉が静かに耳に飛び込んできた。



「気が付いたら友だちになっていた。

この子、もしかしたら親友かもってそう思っていた、

そんなもんじゃないかな?」



羽鳥先輩は前を見たまま、そう言って、それから、わたしの方に視線を移した。



「ハルちゃん、おしゃべりするだけの友だちなら、もういるでしょう?

それ以上の友だちなんて、持っている人の方が少ないと思うよ」



そうして、微笑を浮かべると、わたしの背中をトントンと二度、優しく叩いた。



気がついたら友だちになっていた。

この子、もしかしたら親友かもって、そう思っていた。



先輩の言葉が、ストンと胸に落ちてきた。



胸にしみいるように、その言葉が、わたしの中に落ちてきた。



わたしたちは、その後、しばらく無言で歩いた。



渡り廊下を渡り終えて、迎えの車が来る裏口に行く分かれ道のところで、わたしは立ち止まり、先輩を見上げた。



「ありがとうございます」



心からの笑顔でお礼を言った。



「どういたしまして」



羽鳥先輩もにっこり笑った。






あの頃と変わらず、先輩は優しかった。

あの時とは違って、何も言えないのに、先輩は、何も言えないわたしを受け入れて、ただ、そこにいてくれた。



先輩の隣では、楽に、自然に、息をすることができた。