不意に、中等部にいた頃のことが、脳裏に浮かんだ。
その頃、わたしは、親友と呼べる女友だちがいないことを寂しく思っていた。
カナがいつも側にいてくれる。
それは嬉しかったし、楽しかった。
でも、クラスの女の子たちが、誰々ちゃんは誰々ちゃんと親友だ……なんて話で盛り上がっているのを聞いて、わたしも憧れた。
だけど、いつもカナといるせいか、学校公認カップルなんて言われているせいか、
ただの友だちはいるけど、
お互いの家に泊まりに行ったり、悩みごとを打ち明け合ったりするような、親しい友だちはいなかった。
一番仲が良かったのは、しーちゃん。
だけど、しーちゃんには親友はいなくても、わたしくらいには仲の良い子が何人もいた。
その日のカウンター当番のとき、わたしは、知らず知らずの内にため息を吐いていた。
そして、一緒に当番をしていた羽鳥先輩が、わたしを気遣って声をかけてくれたのだ。
「どうした? 大丈夫?」
ちょうど、カウンターには人がいなくて、閲覧室にいる数名も奥の書棚の方に行っていて、周りには人がいなかった。
「あ、はい。元気です」
わたしが疲れたような顔をすると、カナはすぐに過剰に心配をする。
だから、わたしは、こういう時、いつもすぐに満面の笑顔を見せられる。



