中等部の2年生のとき、図書委員になった。
本が大好きだったので、初めて立候補して。
カナは例によって心配性で、委員なんてやるなよとか何とか言っていたけど、わたしはやってみたかったから。
初めての委員会で、羽鳥先輩に会った。
「あれ?」
と、最初に言ったのは羽鳥先輩。
なんだろう、と小首を傾げると、先輩はにっこり笑った。
一見キツそうに見える眼鏡の奥の切れ長の目が細くなり、それだけで、グッと人なつこい感じになる。
「市立図書館で会ったよね」
そう言われて、思い出した。
中等部の図書室は小さくて、本の種類も少ない。
だから、街の図書館に行ってみた。
そこで、棚の上の方にある本を取ろうと、踏み台を探していたら、
「ここにあるよ」
と、持って来てくれたのが、目の前の先輩だった。
背が高くて細身で、眼鏡をかけている。
とても頭が良さそうな人。
一見、切れ者で冷たそうにも見えるのに、笑うととても優しい。
小声で、
「ありがとうございます」
と言うと、先輩は気さくに、
「どういたしまして」
と言って、そのまま書棚に並ぶ本の背表紙に、視線を戻した。
「あの時は、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げると、先輩は手をひらひらと振って笑った。
「お礼を言われる程のことじゃないよ」
委員会はまだ始まらない。
「本好き?」
「はい」
「……って、そりゃそうか。図書委員だもんね」
「先輩も好きですよね?」
「もちろん」
それから、委員会が始まるまでの間、どんな本が好きかとか、色んな話をした。
じきに、本の貸し借りをするようになり、それは、先輩が卒業するまで続いた。



