「羽鳥先輩」
図書館の閲覧室。
その窓際に置かれたテーブルで、羽鳥先輩は分厚い本を開いていた。
「あ、ハルちゃん」
「こんにちは」
小声で挨拶すると、先輩はにっこりと微笑む。
眼鏡の奥の切れ長の目が、スッと細くなり、優しい印象になる。
「こんにちは」
羽鳥先輩は読んでいた本にしおりを挟むと、隣の席を勧めてくれた。
テスト前でもなく、閲覧室には人はほとんどいない。
「本、ありがとうございました」
お借りした文庫本をテーブルに置く。
「あれ、もう読んだの?」
早いね、と羽鳥先輩は笑う。
「はい。面白くて」
「だよね?」
羽鳥先輩は嬉しそうに、そう言ってから、今度は、申し訳なさそうに続けた。
「って言うか、ごめんね」
「なにがですか?」
「具合が悪くて寝込んでるのに、本なんか届けちゃって」
「いえ、ぜんぜん大丈夫です。本当に辛い時は、読めないし」
「そりゃ、そうだ」
羽鳥先輩の笑顔がまぶしい。
先輩は、窓の外に目をやる。
図書館の向こうには緑が広がっている。
「外行こうか?」
それは、ちょっとおしゃべりしようか、という合図。
挨拶や用を済ますくらいならともかく、図書館で長話は非常識だ。
「はい」
わたしは、こくりと頷いた。
誰かと、話したかったのかも知れない。
カナのことを知らない人と……。
もしかしたら、中等部からの先輩だから、カナのことも知っているかも知れないけど。
それでも、きっと、羽鳥先輩なら、何の先入観もなしに、わたしと話してくれる気がしていた。
図書館の閲覧室。
その窓際に置かれたテーブルで、羽鳥先輩は分厚い本を開いていた。
「あ、ハルちゃん」
「こんにちは」
小声で挨拶すると、先輩はにっこりと微笑む。
眼鏡の奥の切れ長の目が、スッと細くなり、優しい印象になる。
「こんにちは」
羽鳥先輩は読んでいた本にしおりを挟むと、隣の席を勧めてくれた。
テスト前でもなく、閲覧室には人はほとんどいない。
「本、ありがとうございました」
お借りした文庫本をテーブルに置く。
「あれ、もう読んだの?」
早いね、と羽鳥先輩は笑う。
「はい。面白くて」
「だよね?」
羽鳥先輩は嬉しそうに、そう言ってから、今度は、申し訳なさそうに続けた。
「って言うか、ごめんね」
「なにがですか?」
「具合が悪くて寝込んでるのに、本なんか届けちゃって」
「いえ、ぜんぜん大丈夫です。本当に辛い時は、読めないし」
「そりゃ、そうだ」
羽鳥先輩の笑顔がまぶしい。
先輩は、窓の外に目をやる。
図書館の向こうには緑が広がっている。
「外行こうか?」
それは、ちょっとおしゃべりしようか、という合図。
挨拶や用を済ますくらいならともかく、図書館で長話は非常識だ。
「はい」
わたしは、こくりと頷いた。
誰かと、話したかったのかも知れない。
カナのことを知らない人と……。
もしかしたら、中等部からの先輩だから、カナのことも知っているかも知れないけど。
それでも、きっと、羽鳥先輩なら、何の先入観もなしに、わたしと話してくれる気がしていた。



