12年目の恋物語


「図書館だけじゃなくて、先輩に借りた本も返したいし」

「先輩に借りた本?」

「この前、カナが届けてくれたの。読み終わったから」

「ああ!! あれ!」



なぜか、カナが目を見開いた。



「羽鳥先輩の!!」

「……よく覚えてるね」



カナは、羽鳥先輩とは、しゃべったこともないし、会ったこともないはずだ。



「そりゃ」



と、カナは頭をかいた。



「いいよ。待ってるから」



カナが今度こそ、鞄を取ろうとするのを見て、わたしは慌てて、鞄を抱え込んだ。



「わたしがイヤだもん」

「なんで?」

「落ち着かないもの」



カナ。ごめん。



明らかにショックを受けている顔を見ていると、決意が鈍りそうになる。



「じゃあね、また明日」



わたしは立ち上がって、硬い表情で、カナに手を振り、歩き出した。



せめて、笑顔を見せてあげたかった。



でも、どうしてもできなかった……。