「図書館だけじゃなくて、先輩に借りた本も返したいし」
「先輩に借りた本?」
「この前、カナが届けてくれたの。読み終わったから」
「ああ!! あれ!」
なぜか、カナが目を見開いた。
「羽鳥先輩の!!」
「……よく覚えてるね」
カナは、羽鳥先輩とは、しゃべったこともないし、会ったこともないはずだ。
「そりゃ」
と、カナは頭をかいた。
「いいよ。待ってるから」
カナが今度こそ、鞄を取ろうとするのを見て、わたしは慌てて、鞄を抱え込んだ。
「わたしがイヤだもん」
「なんで?」
「落ち着かないもの」
カナ。ごめん。
明らかにショックを受けている顔を見ていると、決意が鈍りそうになる。
「じゃあね、また明日」
わたしは立ち上がって、硬い表情で、カナに手を振り、歩き出した。
せめて、笑顔を見せてあげたかった。
でも、どうしてもできなかった……。



