「そんなの決まってるだろ」



兄貴は笑いながら言った。



「え、決まってるの!?」



食いつくオレに、兄貴は不敵に笑って続けた。



弟のオレから見ても、カッコ良い大学生の兄貴。

過去に見かけた彼女は、何人いただろう?

オレなんかより、よっぽど恋愛経験も豊富だ。



その兄貴が決まっていると言うのだから、オレが食いつかない訳がない。



「そりゃ、お前、他に好きな男ができたんだろ?」



兄貴はこともなげに、そう言った。



その瞬間、オレの表情は間違いなくフリーズしたと思う。



兄貴の顔が、

見慣れた家のリビングの景色が、

言葉の意味を理解すると同時に、

凍りつき色を失った。