「ごめん…ね」



「え? ハル? いったい、どうしたの?」



涙が止まらないまま、いきなり謝りだしたわたしに、カナが困った顔をする。



「ごめんね」



もう、自由になっていいんだよ、カナ。



そう思うのに、

言葉にならなかった。



なにを言っても、カナは「そんなことない」って否定する気がして。



否定されたら、きっと、わたしは、またくじけてしまうから。



だって、こんなにツラい。



カナのいない毎日を想像するだけで、眼が潤んでくる。



「ハル、ごめんな、起こして」



カナが、よしよしと、大きな手でわたしの頭をなでた。



「もう少し、休んでな。で、今日は帰った方がいい。家に電話しといてやるから」



ほら、と、カナが、また涙を拭いてくれた。



結局、そのまま、わたしはまた眠ってしまって、それから、迎えの車に乗り、早退した。



寝ている間、休み時間には、やっぱりカナが来てくれていたらしい。



養護教諭の先生に、



「相変わらず、お熱いわね。優しい彼氏で幸せね」



と言われ、なにも答えられなかった。