12年目の恋物語


過去と現在の意識が錯綜する。



そうか。

カナだったんだね。



そんなこと、すっかり忘れてた。



毎日が楽しくて。



入院も体調が悪いことも、割と、いつものことだったから。



確かに、4歳のときの入院は長引いた。

何度も心臓が止まり、1ヶ月以上、死の淵をさまよったって聞いている。

心臓の手術もして、幼稚園に行けたときには、もう、秋になっていた。





「叶太くんを解放してあげて!」



「いつまで、縛り付けるの!?」



「叶太くんが、なんで、あなたのことを、あんなに世話を焼いていると思ってるの!?」



「叶太くんが、なんで、あなたに優しいと思ってるの!」



「あなたの身体のこと、責任を感じているんじゃない!!」



次々に浮かぶ、田尻さんの言葉。



カナが、そんな思いで、わたしといてくれたなんて、気づきもしなかった。



カナ、ごめんね。



わたしのせいで、辛い思いさせて、

何年も、束縛し続けて、

丸11年も世話を焼かせて、



ごめんね。

ごめんね。

ごめんね。



もう、いいから。



わたしは大丈夫だから。