過去と現在の意識が錯綜する。
そうか。
カナだったんだね。
そんなこと、すっかり忘れてた。
毎日が楽しくて。
入院も体調が悪いことも、割と、いつものことだったから。
確かに、4歳のときの入院は長引いた。
何度も心臓が止まり、1ヶ月以上、死の淵をさまよったって聞いている。
心臓の手術もして、幼稚園に行けたときには、もう、秋になっていた。
「叶太くんを解放してあげて!」
「いつまで、縛り付けるの!?」
「叶太くんが、なんで、あなたのことを、あんなに世話を焼いていると思ってるの!?」
「叶太くんが、なんで、あなたに優しいと思ってるの!」
「あなたの身体のこと、責任を感じているんじゃない!!」
次々に浮かぶ、田尻さんの言葉。
カナが、そんな思いで、わたしといてくれたなんて、気づきもしなかった。
カナ、ごめんね。
わたしのせいで、辛い思いさせて、
何年も、束縛し続けて、
丸11年も世話を焼かせて、
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
もう、いいから。
わたしは大丈夫だから。



