教室に入ると、いつものように、カナがわたしの机まで来て、鞄を置いてくれた。

クラスの女の子たちの熱い視線が痛い。



「見せつけてくれるよね~」

「愛があるね~」

「さすが、学校一の公認カップル」

「いいな~。あんな彼氏欲しい~」



カナはわたしの彼氏じゃ、ない。

腐れ縁の幼なじみ。

ううん。

腐れ縁……は、12年間同じクラスという腐れ縁すら、カナの思惑で作られたものだった。



だから、実際にはただの幼なじみ。



なのに、もう何年も前から、わたしたちは公認カップルと呼ばれていた。



カナはいつだって、



「オレがハルを守る」



って、公言していた。



鞄を運んでくれる。

休んだら、プリントやノートを届けてくれて、学校でのできごとを話してくれる。

わたしの顔色に敏感で、わたしが少しでも無理をしそうになると、素早く止める。



……カナは、いつだって、わたしの心配をしている。



「陽菜、なに、暗い顔してんの? 大丈夫? 気分、悪い?」



ポンと肩を叩かれて、ビクッと震えると、肩を叩いた相手の方が驚いた顔をした。

クラスで一番仲が良い友だち、寺本志穂、しーちゃんだった。