叶太くんが好きだった。
叶太くんの彼女になりたいと思っていた。
わたしが、もし、叶太くんの彼女だったらって、そんな空想、いっぱいした。
違うね。
わたし、叶太くんの彼女になりたかったんじゃないよ。
違う。
わたしがわたしのままで、叶太くんの隣にいるんじゃなくて、
わたし、牧村さんになって、叶太くんの隣にいたかったんだ。
ベッドに寝転がったまま、
天井を見ていたら、
視界がゆらゆらと揺れ始めた。
気がついたら、涙があふれていた。
あまりに幼い自分の恋に、呆れて……。
そんな、幼い恋を何年も続けて、
牧村さんを妬んだ挙げ句、
何の罪もない彼女を、
あやうく殺しけけたことに気がついて。
自分がしたことの重さに、
あやうく、人を殺しかけたという事実の重さに、
改めて、気がついて……。



