12年目の恋物語


叶太くんが好きだった。



叶太くんの彼女になりたいと思っていた。

わたしが、もし、叶太くんの彼女だったらって、そんな空想、いっぱいした。



違うね。



わたし、叶太くんの彼女になりたかったんじゃないよ。



違う。



わたしがわたしのままで、叶太くんの隣にいるんじゃなくて、

わたし、牧村さんになって、叶太くんの隣にいたかったんだ。



ベッドに寝転がったまま、

天井を見ていたら、

視界がゆらゆらと揺れ始めた。



気がついたら、涙があふれていた。



あまりに幼い自分の恋に、呆れて……。



そんな、幼い恋を何年も続けて、

牧村さんを妬んだ挙げ句、

何の罪もない彼女を、

あやうく殺しけけたことに気がついて。



自分がしたことの重さに、

あやうく、人を殺しかけたという事実の重さに、

改めて、気がついて……。