12年目の恋物語


「ハルちゃんね、死にかけたんだよ」



羽鳥先輩は、静かに、だけど、威圧感のオーラを全身にまとって、そう言った。



「え?」



「この場所で」



先輩は、ゆっくりと辺りを見回した。



「キミが、呼び出して、言いたいことを言った、あの日」



それから、わたしの方に向き直り、真顔で告げた。



「広瀬が駆けつけて、すぐに救急車を手配したから助かった」



ウソ。



「一時間遅かったら、危なかったそうだ」



なんで?

なんで、あれくらいで!?



わたしが呆然としていると、先輩は呆れたように告げた。



「知らなかったの? ハルちゃん、心臓が悪いんだよ」



知らなかった。

ただ、身体が弱いくらいにしか思ってなかった。



「キミからプレッシャーをかけられ続けて、すっかり体調を崩していてね。

あの日、ここで、キミが立ち去った後、発作を起こした」



先輩は、わざとらしくため息を吐いた。



「人を好きになるのは悪いことじゃない。

それが例え、横恋慕だったとしても、好きになる気持ちは抑えられないかも知れない」



先輩は、わたしの目をジッと見つめた。



「だけどね、それで人の命を奪っていいはずは、ないよね?」