「ハルちゃんね、死にかけたんだよ」
羽鳥先輩は、静かに、だけど、威圧感のオーラを全身にまとって、そう言った。
「え?」
「この場所で」
先輩は、ゆっくりと辺りを見回した。
「キミが、呼び出して、言いたいことを言った、あの日」
それから、わたしの方に向き直り、真顔で告げた。
「広瀬が駆けつけて、すぐに救急車を手配したから助かった」
ウソ。
「一時間遅かったら、危なかったそうだ」
なんで?
なんで、あれくらいで!?
わたしが呆然としていると、先輩は呆れたように告げた。
「知らなかったの? ハルちゃん、心臓が悪いんだよ」
知らなかった。
ただ、身体が弱いくらいにしか思ってなかった。
「キミからプレッシャーをかけられ続けて、すっかり体調を崩していてね。
あの日、ここで、キミが立ち去った後、発作を起こした」
先輩は、わざとらしくため息を吐いた。
「人を好きになるのは悪いことじゃない。
それが例え、横恋慕だったとしても、好きになる気持ちは抑えられないかも知れない」
先輩は、わたしの目をジッと見つめた。
「だけどね、それで人の命を奪っていいはずは、ないよね?」



