叶太くんが、ゆっくりと歩いてくる。



顔が真っ赤だ。



かなり緊張してる。



右手と右足が一緒に出てるよ。



こんなときなのに、ちょっとおかしくなって、思わず笑顔になる。



叶太くんが、陽菜の前に着いた。



誰もが、注目する中、陽菜は涙で濡れた顔で、叶太くんを見上げた。



叶太くんは、そのまま、スッと陽菜の前にしゃがんで、



「ハル、好きだ」



真っ赤な顔で、そう言って、



それから、手に持っていた若草色の封筒を、陽菜に差し出した。



「ハル、オレと付き合って」



たぶん、今、ここに、「あれ? もう付き合ってたでしょう?」って思った人は、いない。



そんなこと、きっと、みんな忘れてる。



陽菜は、両手でその封筒を受け取ると、小さな声で、



「わたしでいいの?」



と聞いた。



「ハルがいいんだ! ハルじゃなきゃ、ダメなんだ」



叶太くんが、陽菜の手を取って、もう一度言った。



「ハル、オレと付き合ってください」



陽菜が、



「はい」



と、また、小さな声で言った。



その瞬間、教室が壊れるんじゃないかというくらいの、大歓声が起きた。