陽菜の肩が震えたと思ったら、大きな目から、大粒の涙があふれ出した。
ポロポロとこぼれる涙を拭こうともせずに、陽菜は、叶太くんを見つめていた。
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オレが守るんだって、思った。
二度と、あんな苦しい思いさせたくないって、思った。
ごめんね、ハル。
オレ、ハルが好きで好きで仕方なくて、いつもハルのこと束縛していたかも知れない。
初恋は4歳のときだけど、オレ、何回でもハルに恋してるよ。
あの時より、もっともっと、ハルが好きだよ。
ハルと一緒にいるだけで幸せで、ハルの声を聞くともっと幸せで、ハルの笑顔が見れた日は、オレ、嬉しくて空だって飛べそうだ。
ハルはいつもニコニコ笑ってくれて、オレ、だから、毎日本当に幸せだった。
ハルは、こんな何の特技もない、オレみたいなヤツはイヤかも知れないけど。
それでも、オレ、ハルを好きな気持ちだけは、誰にも負けないから!!
だから、ハル、こんなオレだけど、オレに、ハルのこと、一生守らせてください!
一生、オレをハルの一番近くにいさせてください!!
広瀬叶太
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スピーカーの中の叶太くんが、自分の名前が読み上げ、少しして、BGMがフェードアウトした。
斎藤くんが、叶太くんの肩を叩いて、若草色の封筒を手渡した。
それから、何か言った。
口の形からして、たぶん、「ほら、行けよ」。
叶太くんが立ち上がる。
他のクラスから、すごい歓声が上がっているのが聞こえてきた。
でも、うちのクラスはとても静かで、誰も、一言だって、しゃべったりしてなくて、叶太くんと陽菜を、固唾をのんで見守っていた。



