12年目の恋物語


陽菜の肩が震えたと思ったら、大きな目から、大粒の涙があふれ出した。

ポロポロとこぼれる涙を拭こうともせずに、陽菜は、叶太くんを見つめていた。




  ◆   ◆   ◆



オレが守るんだって、思った。


二度と、あんな苦しい思いさせたくないって、思った。


ごめんね、ハル。
オレ、ハルが好きで好きで仕方なくて、いつもハルのこと束縛していたかも知れない。


初恋は4歳のときだけど、オレ、何回でもハルに恋してるよ。


あの時より、もっともっと、ハルが好きだよ。


ハルと一緒にいるだけで幸せで、ハルの声を聞くともっと幸せで、ハルの笑顔が見れた日は、オレ、嬉しくて空だって飛べそうだ。


ハルはいつもニコニコ笑ってくれて、オレ、だから、毎日本当に幸せだった。


ハルは、こんな何の特技もない、オレみたいなヤツはイヤかも知れないけど。


それでも、オレ、ハルを好きな気持ちだけは、誰にも負けないから!!


だから、ハル、こんなオレだけど、オレに、ハルのこと、一生守らせてください!


一生、オレをハルの一番近くにいさせてください!!


広瀬叶太




  ◆   ◆   ◆



スピーカーの中の叶太くんが、自分の名前が読み上げ、少しして、BGMがフェードアウトした。



斎藤くんが、叶太くんの肩を叩いて、若草色の封筒を手渡した。



それから、何か言った。



口の形からして、たぶん、「ほら、行けよ」。



叶太くんが立ち上がる。



他のクラスから、すごい歓声が上がっているのが聞こえてきた。



でも、うちのクラスはとても静かで、誰も、一言だって、しゃべったりしてなくて、叶太くんと陽菜を、固唾をのんで見守っていた。