「え? ……ハ、ル?」



慌てて聞き返すと、ハルは目をそらした。

今まで見たこともないような、ハルの暗い表情。



オレの頭は、その瞬間、真っ白になった。



いったい、何が起こってるってんだ?



最近、ハルが冷たい気はしていた。



だけど、いったい、なんで!?



オレは小学生の頃から、毎日、ハルの送迎の車まで、ランドセルを持ち運ぶ係を買って出ていた。

別に、そんな係があるわけじゃない。

身体の小さなハルが、大きなランドセルをしょって息を切らしているのを見て、オレが持つことにしたんだ。



ただ、ハルが大事だったから。

少しでも、ハルの力になりたくて。



家は隣なのに、一緒には通えない。

オレは小学生の頃はバス。中学からは自転車。

ハルは特例で車送迎。

だから、オレは、車の着く裏口で、毎日ハルを待ち、ハルを見送る。

中学からは、朝夕、ハルの学生鞄を運んだ。

小学生の時は、2つ持つには重かったランドセル。

学生鞄に変わる頃には、2つでも3つでも、軽々になっていた。



一週間前、ハルは、それもいらないと言った。



「もう、高校生だし」



ハルはそう言ったけど、高校生になると、なんでやめなきゃいけないのか、オレには訳が分からなかった。

それは、オレにとっては、クラスメイトの目にさらされず、ハルとのんびり会話できる、とても貴重な時間だったんだ。



「でも、毎日毎日、悪いし」



オレがかまわないと言っても、ハルは強固に断ってきた。

結局、オレが譲らず、ハルが折れた。

でも、その後、以前のような楽しい会話はなく、話すのはオレばかり、ハルは生返事の毎日となった。



いったい、どうしたんだと思っていた。

何があったのかと。



でも、こんなの、ちょっとしたボタンの掛け違いで、きっと、しばらくすれば、元のオレたちに戻るだろうと思っていた。



なんか、オレ、やらかしたかな、と。

で、ちょっと、ハルのこと、怒らせちゃったかな、と。



だけど、どうやら、そんな簡単な話じゃなさそうだ。



なあ、ハル。

オレ、なんかした!?