12年目の恋物語


叶太くんは、呆然としつつ、視線を陽菜に移した。



  ◆   ◆   ◆



でも、オレ、あれは運命だったと思う。


ハルはちゃんと、戻って来たし。
半年も入院したけど、ちゃんと戻って来たし。


あの時、ハルが倒れて入院したとき、オレ、本当に驚いて、泣きながら親に話して、それから、毎日病院に押しかけた。

まだ容態が落ち着かなくて、会えないのに、毎日、ハルの病室に来るオレを可哀想だと思ったのか、ハルの母さんが、特別に、面会謝絶中のハルに会わせてくれた。

ハルが倒れて、一週間か二週間くらい後だったかな。


ようやく会えたハルは、まだ、心電図とか、酸素マスクとか、点滴とかいっぱい付けてて、それを見て、オレ、大泣きしたんだよな。

ハル、覚えてる?

オレ、ベッドサイドまで行って、「ハルちゃん、ごめんね、ごめんね」って泣きながら謝ったよ。

そしたらさ、ハル、こう言ったんだ。


「あのね、はるなが悪いんだよ」


オレが泣いてると、ハルは、オレの頭をなでてくれて。


「ママにも、パパにも、おばあちゃまにも、おじいちゃまにも、おにいちゃまにもね、はるなは走っちゃダメだよって言われてたの。

はるな、知ってたのに、みんながあんまり楽しそうだったから、はるなも走れるかも知れないって思って、走っちゃったんだよ。

ね? だから、はるなが悪いんだよ。

カナタくん、泣かないで」


オレさ、そう言われて、もう、泣けて泣けて仕方なくって、涙が止まらなくて、そしたら、ハル、酸素マスクはずして、オレのこと抱きしめてくれた。


それから、ハルは、オレの背中をトントンってやりながら、

「だいじょうぶだよ。怖くないよ。はるな、だいじょうぶだからね」

って、言って抱きしめてくれた。

ずっと、ずっと。

ハルのお母さんが、酸素マスクをしなさいって言うまで、ずっと。


オレ、自分が死にかけてさ、

苦しい思いしてさ、

まだぜんぜん、良くなってないのに、

それなのに、

そんな目にあわせた張本人に、そんなこと言えるってことに驚いて。


なんて、心の綺麗な子なんだって思った。


オレ、あの時、恋に落ちたんだ。
ハルが、オレの初恋だよ。



  ◆   ◆   ◆



陽菜の肩をトンと叩いて、叶太くんの方を指さした。


陽菜が、わたしの指がさす方を見る。


二人の視線がぶつかった。