叶太くんは、呆然としつつ、視線を陽菜に移した。
◆ ◆ ◆
でも、オレ、あれは運命だったと思う。
ハルはちゃんと、戻って来たし。
半年も入院したけど、ちゃんと戻って来たし。
あの時、ハルが倒れて入院したとき、オレ、本当に驚いて、泣きながら親に話して、それから、毎日病院に押しかけた。
まだ容態が落ち着かなくて、会えないのに、毎日、ハルの病室に来るオレを可哀想だと思ったのか、ハルの母さんが、特別に、面会謝絶中のハルに会わせてくれた。
ハルが倒れて、一週間か二週間くらい後だったかな。
ようやく会えたハルは、まだ、心電図とか、酸素マスクとか、点滴とかいっぱい付けてて、それを見て、オレ、大泣きしたんだよな。
ハル、覚えてる?
オレ、ベッドサイドまで行って、「ハルちゃん、ごめんね、ごめんね」って泣きながら謝ったよ。
そしたらさ、ハル、こう言ったんだ。
「あのね、はるなが悪いんだよ」
オレが泣いてると、ハルは、オレの頭をなでてくれて。
「ママにも、パパにも、おばあちゃまにも、おじいちゃまにも、おにいちゃまにもね、はるなは走っちゃダメだよって言われてたの。
はるな、知ってたのに、みんながあんまり楽しそうだったから、はるなも走れるかも知れないって思って、走っちゃったんだよ。
ね? だから、はるなが悪いんだよ。
カナタくん、泣かないで」
オレさ、そう言われて、もう、泣けて泣けて仕方なくって、涙が止まらなくて、そしたら、ハル、酸素マスクはずして、オレのこと抱きしめてくれた。
それから、ハルは、オレの背中をトントンってやりながら、
「だいじょうぶだよ。怖くないよ。はるな、だいじょうぶだからね」
って、言って抱きしめてくれた。
ずっと、ずっと。
ハルのお母さんが、酸素マスクをしなさいって言うまで、ずっと。
オレ、自分が死にかけてさ、
苦しい思いしてさ、
まだぜんぜん、良くなってないのに、
それなのに、
そんな目にあわせた張本人に、そんなこと言えるってことに驚いて。
なんて、心の綺麗な子なんだって思った。
オレ、あの時、恋に落ちたんだ。
ハルが、オレの初恋だよ。
◆ ◆ ◆
陽菜の肩をトンと叩いて、叶太くんの方を指さした。
陽菜が、わたしの指がさす方を見る。
二人の視線がぶつかった。



