後、3時間。後、2時間。

わたしは、時計を見るたび、時を数える。



休み時間、叶太くんが席に来た。



わたしと陽菜の席は、けっこう離れている。

だけど、叶太くんは声を潜めて言った。



「なあ、志穂、どうなってんの?」

「ん? なんのこと?」

「羽鳥先輩が……」

「羽鳥先輩が、どうかした?」



叶太くんが、困ったような顔をした。

分かっててしらばっくれるのも、疲れるもんだ。



「ごめん。わたし、陽菜んとこ行ってくるね~」



叶太くんと、こんな風になってしまってから、陽菜は、休み時間、一人で過ごしていることが多い。

陽菜は、誰かとつるんでいないと落ち着かないっていうタイプじゃなくて、

叶太くんがいなくても、本を静かに読んだり、ぼんやり考えごとをしたり、

誰か他の人とおしゃべりしていたり、

ちゃんと一人で過ごしている。

陽菜の周りは、いつもゆっくりと時間が流れているような気がする。

そうして、必要な時には、ちゃんと声をかけてくるんだ。



むしろ、叶太くんの方が、陽菜がいない時間をもてあましているように見える。



「陽菜~」

「ん? どうしたの?」



陽菜が教室にいる、それだけで、わたしは浮かれていた。



「ねえ、今日、いいことがあるからね?」



これくらいは、いいよね?



「そう?」



陽菜は不思議そうな顔をして、小さく首を傾げていた。