ボクが怪訝そうな顔をしていると、寺本さんは続けた。



「なんか、すごく具合が悪そうだった……って言うか、」



寺本さんが、顔をゆがめた。



「意識、なかったって」



ボクも息をのむ。

思っていたより、事態は悪い方に転がっていた。



「叶太くんは、たぶん、もっといろいろ分かっているだろうけど、斎藤くんじゃ、それ以上、分からないって」



……ハルちゃん。



「あの、叶太くんが、陽菜のおじいさんに電話してて、その内容が、意識はない、呼吸はかなり苦しそう、でも、心臓は動いてる……だったって」



心臓は動いてる、

そう言わなくてはならないほどの状態。



ハルちゃんのおじいさん。

牧村総合病院の院長か。

最高の医療は保証されているけど……。



寺本さんの顔を見ると、やはり、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

だけど、泣かない。

この子は強い。



「叶太くんは、すごく落ち着いてて、救急車に一緒に乗って行っちゃったって……」



ああ、だから、情報源が斎藤。



「何していいか分からなかったけど、とにかく先輩には報告しなきゃと思って」

「ありがとう」