「ハル!!」
だけど、ハルの返事はなくて。
ハルの意識は、まるで戻らなくて。
オレは本当に間に合ったのか、分からなくなって。
息はある。
心臓も動いてる。
だから、
きっと大丈夫だと、
大丈夫に違いないと、
オレは祈るような思いで、
意識のないハルの手を握った。
保健の先生がやってきて、
担任がかけつけて、
だけど、誰も、見守る以外の何もできなくて。
それから、遠くに救急車のサイレンが聞こえて、
担任が誘導に走った。
オレは慌てて、ハルのじいちゃんに電話をした。
「じいちゃん? オレ、叶太」
「おう。カナくん。どうした? こんな時間に」
「驚かないで。ハルが倒れて、今、救急車呼んだ。そっちに運んでもらうから、待機してて」
「分かった!」
「意識はない。呼吸はかなり苦しそう。でも、心臓は動いてる」
「ああ。ありがとう!」
隣で聞いていた斎藤が、「誰?」と聞いてくる。
「ハルのじいちゃん。ハルんちも病院なんだ」
「運ぶ……って」
「牧村総合病院。知ってる?」
「知ってる、って!? 知ってるに決まってるだろ!」
「はは。でかいもんな」
血の気のない冷たいハルの手を握りながら、斎藤の存在をどれほどありがたいと思ったか。
「院長だからさ、外来もないじゃん。病院にいたら、飛んできてくれるから……」
「そっか。心強いな」
「ハルのお母さんも医者なんだけど、そっちは、たぶん、忙しいから……」
そんなことを説明しながら、ようやくオレは心の平静を保っていた。
心の中では、ひたすら、
ハル、頑張れ。
ハル、頑張れ。
と、唱えていた。