12年目の恋物語


田尻が一瞬、怯んだような顔をした。



ダメだ。

胸騒ぎがするんだ。

一刻も早く、ハルのところに行きたいんだ。



それなら、コイツを怒らせちゃ、ダメだ。



まだ、何があったのかなんて、分からないんだから。

ただ、おしゃべりしただけかも知れない。

用事があって、話していただけかもしれないんだから。



「ハルが、どこにいるか、教えてくれる?」



オレは努めて笑顔で、田尻に笑いかけた。



「あの……」



「会ってたんだよな?」



優しく、優しく、オレは笑顔をつくる。



「……う、うん」



ビンゴ!!



「ハルは、どこにいるのかな?」



「え、っと」



「渡さないといけないものがあって、探してるんだ。

なあ、斎藤」



そう言って、斎藤を振り返った。

何となく、斎藤に振った。



本当に、何となく、そうした方がいい気がして。



「そうなの?」



「ああ」



田尻は、どうしようかなと首を傾げた。

教えろよ。

教えたからって、おまえに何か悪いことがあるわけじゃ、ないだろ!?



オレはまた笑顔をつくる。



「教えてくれたら、オレ、探しに行くから、さ」



ようやく、田尻は口を開いた。



「保健室の手前のガラス戸から出たところの、校舎裏」



「中等部に続く雑木林の?」



「うん。でも、まだいるか分からないよ?」



「ああ。大丈夫。ありがとう!」