12年目の恋物語


「田尻!」



気がつくと、オレは駆けだしていた。



「叶太くん」



田尻はのんきに笑顔で手を振ってくれた。



「なあ。ハル、知らない?」



その瞬間、田尻の表情が固まった。



「牧村さん?」



「ああ。牧村陽菜」



知らないはずはないと分かっていて、フルネームで言った。

オレの勘は告げていた、コイツだ、と。

コイツが、ハルと一緒にいたんだ、と。



隣のクラスの女子。

身長は164~5センチ。

しっかり鍛えられて引き締まった身体。

ショートカットで、日焼けしていない、普通に健康的な肌色。



そして、未だ、体操服のままで、廊下を歩いているのが、何よりの証拠。



きっと、コイツだ。



「ハルは、どこ?」



「……え? 叶太くん?」