「田尻!」
気がつくと、オレは駆けだしていた。
「叶太くん」
田尻はのんきに笑顔で手を振ってくれた。
「なあ。ハル、知らない?」
その瞬間、田尻の表情が固まった。
「牧村さん?」
「ああ。牧村陽菜」
知らないはずはないと分かっていて、フルネームで言った。
オレの勘は告げていた、コイツだ、と。
コイツが、ハルと一緒にいたんだ、と。
隣のクラスの女子。
身長は164~5センチ。
しっかり鍛えられて引き締まった身体。
ショートカットで、日焼けしていない、普通に健康的な肌色。
そして、未だ、体操服のままで、廊下を歩いているのが、何よりの証拠。
きっと、コイツだ。
「ハルは、どこ?」
「……え? 叶太くん?」



