12年目の恋物語


自分の教室を出ると、オレはそのまま隣の教室を覗いた。



「え? どこ行くの?」

「ハルを連れ出した女子、体操服だったらしい」

「ああ。体育、合同だから」

「そう」



オレは、隣のクラスをグルリと見回す。

ダメだ。

分からない。



「ショートカットで運動部の女子って、誰か知ってる?」

「え?」

「ハルを連れ出したの、運動部のショートカットの女子だって。

身長は少し高い。そうだな、ハルが158だから、比べたんだとしたら、165センチくらい?」

「……分かるかよ」



見当たらない。

ダメだ、クラスも違うし、分からない。



「よう、叶太。どした? 誰か探してんの?」



どうしようかと思っていると、中等部で一緒だったヤツが声をかけてきた。



「俊、ちょうど良かった! 運動部でショートカットの女子って、誰かいない?」

「は?」

「運動部でショートカットの女子。身長は普通より高め。……あ。日焼けはあんまりしてない」

「……なんのこと?」



その時、斎藤がオレの肩をポンポンと叩いた。



「広瀬」

「ん?」

「あれ」



斎藤の視線の先を見ると、田尻が歩いていた。

みんなが着替え終わっている中、体操服を着て、右手に購買部で買ってきたらしいパンの入った袋を持っていた。