12年目の恋物語


ボクじゃ、ない。



……ボクじゃ、ない?



羽鳥先輩じゃ、ない。



ええええ~~~!!?

じゃ、誰よ!!



羽鳥先輩以外に、誰がいるって言うの!?



思わず頭を抱える。



これ以上、ヒントなんてないのに!!



疲れたような陽菜の笑顔が脳裏に浮かぶ。

保健室に行ってくるって言った時の青白い顔が思い浮かぶ。

すっかり細くなった手首。

ほとんど残ったまま、フタをされるお弁当。




「ハルの身体、たぶん、おまえらが思ってるより、ずっと悪いんだ」




叶太くんの声が聞こえた気がした。



ダメなのに!!

何とかしなくちゃ、ダメ、なのに!!




「あのときだって、ホント、心臓、何回も止まって、」




もたもたしてる時間なんて、ないかも知れないのに!!



ただでさえ体力がない陽菜が、

食べられなくて、あんなに痩せちゃって……。



いつまでも、こんなことしていたら……。



なんで、わたしには、こんなに力がないんだろう。



悔しくて、悔しくて……、

気がついたら、

うつむいて、

奥歯を噛みしめていたら、

ぽつりぽつりと、雨が降り出した。



雨だと思ったのに、空は青いままで。



それは、雨ではなくて。


わたしがこぼした涙だった。