陽菜は、別に誰かに逆らったわけでも、わたしを助けてあげようとか、そんな気負いがあったわけではないと思う。



陽菜は穏やかで優しい。

でも、実は淡々としていて、正義感を振りかざすようなタイプでは、決してない。



陽菜は、どのグループにも入っていなかった。



いつも、叶太くんと一緒にいて、

女の子といることは、ほとんどなかった。



それは、小学生の頃からで、

どんなにからかわれても、叶太くんは、陽菜から離れなかったし、

陽菜は、いつも叶太くんの隣で楽しそうに笑っていた。



どのグループにも入っていなかったけど、陽菜は、いつも誰とでも、ちゃんと仲良く付き合っていた。



わたしがクラスの女子、誰とも話さなくなった頃、陽菜は体調を崩して、学校を休んでいた。



過去、友だちだった子たちが、わたしと口をきかなくなって一週間と少したった頃、

ようやく陽菜は登校してきた。



そして、その翌日、教室移動のタイミングで、



「しーちゃん、一緒に行こう」



と声をかけてきた。



とても懐かしい愛称で。



初等部の1、2年、陽菜と同じクラスだった。



低学年の頃は、みんなから、そう呼ばれていた。