12年目の恋物語


広瀬は、怖い顔をして、牧村の家を見ていて、

オレは、当初の目的をスッカリ忘れて、「オレ、入る学校、間違えたか!?」とか思っていた。



そんな中、寺本だけは、冷静に状況を見ていたらしい。



「あのさ、取りあえず、ケーキ食べない?」



明るいその声に、オレは目を丸くし、広瀬はプッと吹き出した。



「……悪い」



広瀬が振り返って、ようやく、オレたちを見た。



「オレのために来てもらってたのに」



寺本が、白い歯を見せて、にっこり笑った。



「陽菜のためだから、気にしない」

「……ありがとう」



食べながら、ようやく落ち着いたらしい広瀬が、ポツリと言った。



「……オレ、どうすればいい?」



もちろん、オレに答えられる訳がない。

当然、寺本にも答えられないと思っていた。



だけど、寺本は「うーん」と腕を組むと、広瀬に聞き返した。



「叶太くんは、どうしたいの?」