広瀬は、怖い顔をして、牧村の家を見ていて、
オレは、当初の目的をスッカリ忘れて、「オレ、入る学校、間違えたか!?」とか思っていた。
そんな中、寺本だけは、冷静に状況を見ていたらしい。
「あのさ、取りあえず、ケーキ食べない?」
明るいその声に、オレは目を丸くし、広瀬はプッと吹き出した。
「……悪い」
広瀬が振り返って、ようやく、オレたちを見た。
「オレのために来てもらってたのに」
寺本が、白い歯を見せて、にっこり笑った。
「陽菜のためだから、気にしない」
「……ありがとう」
食べながら、ようやく落ち着いたらしい広瀬が、ポツリと言った。
「……オレ、どうすればいい?」
もちろん、オレに答えられる訳がない。
当然、寺本にも答えられないと思っていた。
だけど、寺本は「うーん」と腕を組むと、広瀬に聞き返した。
「叶太くんは、どうしたいの?」



