好きでもない女とキスをして、手を繋いで、抱いて。


俺の全てから彩海の存在を無くしたかった。


でも……………。


消えることはなくて……………。


どちらかといえば、彩海の温もりがさらに強まった気がした。


彩海の声が聞こえてくると、今までの思い出が走馬灯のように映る。


声だけじゃない。


少し見るだけで、心の中の想いが溢れてきそうだった。




「ねぇ、琉斗ぉ。」


名前の分からない女が俺の名前を呼ぶ。


「ん??どうした??」


「あそこに居るの琉斗の元カノだよね~。」


その女が指差した先には……………。


「……………彩海……………。」


俺を見ているのか??それとも俺の横に居る女を見ているのか??


彩海の瞳は何かを見ていた。


しかし、彩海は俺と瞳が合うと………………。


何か、喋った……………。


人混みの中、騒音に紛れて何も分からない。


でも………………。


最後の一言は読み取れた。



『ありがとう』    そう呟いていた。