感想ノート

  • こんにちは。

    紅 憐さんのを読みましたが。

    三つのお題がきちんと使われており、風景描写、心理描写までこと細かく書かれてほとんど文句なしに見えます。

    相変わらず、書き方が上手くて脱帽です。

    終わりだから、から主人公の絶望にも似た心理。そうして行動、ハラハラとしてしまいました。


    ただ一つ難点をあげるとすれば、なぜこうなったんだろうの心理描写。

    なぜこうなったんだろうは一回で十分な気がしました。物語を読むペースを何だかくじいてしまうようで。

    何か大切なことかと思い、私めも何度か読み返したのですがどうしてもそこで“つまずいて”しまいます。

    そう言ったところでしょうか。

    素人の感想なので、あまりうまいことは言えませんが、どうかお許しください。

    空波 刻羅 2011/02/10 17:15

  • さて。
    ただいま大絶賛リハビリ中の店主です。どうぞ叩いてやってください。

    紅 憐 2011/02/10 14:49


  • 僕らの横の用水路は、数日降り続いている雨で溢れんほど増水していた。時に追われるように流れる水が、用水路の壁を叩くように舐めるたび、引っ掻くような音が連鎖する。田んぼと用水路の間の、あぜ道。舗装されていない土くれむき出しの細道は、長く緩やかに蛇行し、向こうの、闇の中へ消えていた。
    「あめあめ降れ降れらんらんらん」
    彼女が口ずさむ。
    「あめあめ降れ降れらんらんらん」
    そこばかり、何度目かわからない。ループし続ける。歌は先へ進まない。
    「どうしてそこばかり歌うの?」
    傘を打つ雨粒は止まらない。用水路の荒れ収まらない。僕と彼女の間、およそ五歩分の距離を、音が邪魔し続ける。
    「今で終わりだから」と彼女は言う。藍色の傘に隠れ、彼女の肩より上は見えない。正面を向いているのかも、首だけ、こちらを振り返っているかもわからない。
    「だって、終わりになるんだから」
    答えが、彼女の願いを僕に再認識させる。
    なぜこうなったんだろう。なぜこうだったんだろう。なぜ君は……。
    彼女は僕に背を向けたまま動かない。なにかを待っているように、立ち止まっている。
    雨音と水音が、急き立てる。早くしろと。僕と彼女との距離を。約束を。
    僕は、ポケットから革の手袋を取り出した。手にはめて、傘を放り出す。ぬかるんだ土に傘が落ちる音は、聞こえなかった。意識すべてが、眼前の彼女へ集中していた。
    背後からタックルを仕掛ける。なにがおこるかわかっていた彼女も、悲鳴を上げて倒れた。泥が跳ね、目に入る。彼女の傘が、脇の田んぼに落ちる。今度は聞こえた。泥水が跳ねる音。
    倒れた彼女の上へ馬乗りになる。その首へ、両手を伸ばす。彼女は抵抗しない。ただ僕を、じっと見た。唇がなにかを言うわけもなかった。
    せめて、ありがとうと言ってくれれば、僕も救われただろうに。……手を離し立ち上がる。乱れた鼓動と呼吸は、雨音と水音にかき消されることなく、僕の内側で主張していた。
    彼女はもはや、なにも言わない。制服のブラウスに泥水が染み込んできても、雨が開きっぱなしの眼や口内に溜まっても、文句ひとつ。
    どうして、こうなったんだ。
    手袋を、用水路へ捨てる。それが水面に落ちる音は、波に飲まれて聞こえなかった。
    もっと降れ。もっと流れろ。僕の目から流れる水が、錯覚だと思うくらいに。

    紅 憐 2011/02/10 14:49

  • で。
    店主なので感想をつけさせていただきますが。
    オブラートに包まない言い方をすれば、「いまいち」ですね。
    お話としては、興味を惹かれます。主人公の生い立ちは?少女は何者か?そもそも、そこはどこなのか。なぜそんなところで野点(かな)をしているのか?
    不確かな情報が、読者に「もっと知りたい」と思わせます。
    が、残念なことに、物語の導入部分などとしてはこれでいいかもしれませんが、1000文字小説としては完成していません。物語は終わっていないし、これだけを読んでも、おいしいところはない。また、材料のひとつである手袋が活かされていない。仮に、少女の手先が袂に隠れて見えないことが、手袋の隠喩だとしても、それが特別な味わいを見せているかは、読者の読解力次第です。
    また、空波さんとは異なり、きっちり擬音を省いてきましたね。風景の描写に、けっこうな文字数を当てたものと思います。
    が、結局「音」を表現しているのではなく、あくまでも場景の描写のうちに、音がそのひとつとして入った、くらいであり、流れてしまっています。ただ、擬音を使ってなかったな、という。擬音を使わないにしても、うまい音の表現がなされている。それを手繰るのが、今回のお題でございました。わかりにくかったかもしれません。

    ただ使わないのではなく、意味を持って使う。意味を持って、使わない。
    三つのお題はただ織り交ぜるのではなく、「キー」であり、読者にわからせる。1000文字という区切りは難しいです。が、できないことではありません。当店が全盛の頃は、みんなそうして琢磨しました。
    もちろん、正解はないというのがこの世界です。
    よければまた、足を運んでんはもらえないでしょうか。〝文学喫茶〟は今週いっぱい行っています。よければ、お知り合いに有志の方がいれば、連れ立ってお越しください。
    私はいつも、カフェのカウンターにおりますので。

    紅 憐 2011/02/10 14:05

  • 梅若さん
    はじめまして。よろしければ、はじめまして以上にここにきていただければとも思います。欲張り。

    1000文字は、改行にもスペースにも取られてしまいます。ばかりか、もし運営規範ではじかれる単語があった場合、その間にスペースを挟むなどしなければならないため、よけいに1000文字という壁は厚くなります。が、限られた中でする表現は、作家に言葉を選ばせます。制限がある。こなさなければならない題がある。伝えなければならないものがある。これらを消化しながら自分の書きたいものを書く。難しいですが、求められるものを書くというのは、ただ自分の書きたいものを書くだけより、力になるのです。

    紅 憐 2011/02/10 14:05

  • 初めまして。梅若と申します。

    作品だけぽんと置いておこうかと思いましたが、それはさすがにイカンと思ってご挨拶に参りました。

    長編メインのわたくしには、非常に難しかったです。ていうか、感想ノートの使い方がいまいちわかってないというか。
    1000文字って、改行とか行を空けるとカウントされないと思ってたんですけど、されるようですね・・・・・・。予定では928文字だったんですが、全然入らなくて、削りまくって行も空けられませんでした。
    めっちゃ読みにくいです、すみません。

    お題をストレートに使わず、やたら影にひそめて使いたがる癖があるので、今回もどこにお題があるのやら~かもしれませんが。

    ではでは、脳みそがスカスカになったので、寝ます。

    初参加で妙な作品残してすみませんm(--)m

    藤堂 左近 2011/02/09 23:42

  • ●見渡す限りの枯れ野原。
    元は田圃であったろう所は、びっしりと薄が群生している。
    その薄野原を縫うように走っている細いあぜ道が、かろうじてこの地が元は農村だったことを示している。
    千寿王は、ぼんやりと縁側から見える風景を見つめた。
    耳に入る音は、背後から聞こえる湯の沸く音だけだ。
    「どうぞ」
    小さな声に振り向けば、梅と桜をあしらった茶碗が二つ、置かれている。
    茶を点てる音も、あまり気にしていなかったな、と思い、千寿王は濃い緑を湛えた椀を見つめた。
    「闘茶ですわ」
    部屋の隅から、再び小さな声がした。
    千寿王の向かい、さして広くない庵の隅には、驚くほど色の白い女子(おなご)が座っている。
    顔の大部分は長い髪で覆われ、その漆黒の髪と対照的に、肌と同じく真っ白い着物が細い身体を包んでいる。
    着物は手の先まで覆い隠し、素肌が見えているのは、僅かに覗く顔だけだ。
    「本茶を当ててくださいませ」
    僅かな髪の隙間から、女子が笑う。
    千寿王は茶碗に目を落とし、桜の椀を取った。
    作法通りに飲み、次に梅の椀に口を付ける。
    この女子の点てる茶は、不思議に美味い。
    この枯れ野原にぽつんと建つ庵の、どこにこんな美味い水が湧くのかと思うほどだ。
    女子は狭依(さより)という。
    たまたま見つけたこの庵で、狭依の点てる茶を嗜むのが、人質として育った千寿王の心を唯一穏やかにしてくれる、ささやかな楽しみとなりつつある。
    千寿王の心を読んだように、狭依が笑う。
    口元に持って行った手は、白い着物の袖の中だ。
    狭依の手も、見たことがないな、と、千寿王はぼんやり思う。
    全く正体のわからない女子だが、不思議と知りたいとも思わない。
    導かれるように庵に足を踏み入れたときから、狭依は当たり前のように千寿王に茶を点てている。
    千寿王自身のことも、話していない。
    だが今狭依が言ったように、幼い頃人質として育ったのは、事実である。
    千寿王は椀を置き、狭依を見た。
    髪の間から、井戸の底のような、漆黒の瞳が見つめ返す。

    井戸。
    狭依。

    何かに気づきそうになったとき、再び狭依が口を開いた。
    「本茶を当ててくださいませ」
    千寿王は我に返り、黙って桜の椀を差し出した。

    *********
    マニアックなお題の使い方になっております。

    藤堂 左近 2011/02/09 23:01

  • お、おお……

    まさかお褒めの言葉を貰えるとは思っていなかったので、『うまい』の言葉を見返してしまいました。


    もっとも、きちんと見なければならないご指摘も頭に一つ一つ入れております。

    お題をきちんと生かせてないようで、擬音ばかりこだわってしまいましたねo(_ _*)o

    そんな弱点を更に練り直して、自分の作品に生かしていきたいと思います。

    ありがとうございました。

    空波 刻羅 2011/02/09 21:07

  • さてと。

    露骨に擬音を使っていただいたようで。ですが、さすがにそこは考慮されているのか、擬音を挟むタイミングを演出にしてますね。

    「たっ、たっ。たっ、たっ。」が、短い1000文字という中であえて反復されているので、ホラーとしての怖さも助長されています。
    うまい。

    おしいのは、手袋がたいしたキーポイントになっていないこと。
    そしてなによりも、あぜ道、でした。
    もしも、この舞台が住宅街だったなら。港だったなら。山だったなら。

    たぶん、違和感はさしてなかったと思います。
    この物語が、あぜ道であった意味……あぜ道だからこそ、より表現できたはずの「場景」。
    その場だからこそ味わえるものは風景以外にもあります。におい、聞こえてくる音、当然、跳ねる水も泥混じり。そういう情報を、怖さにつなげられたら、最高だったと思います。

    1000文字、むつかしいです。ですが、その中で、意外にも、ここまで深い表現ができるのかという発見もあります。
    よければ書き直しなり、別作品を書いてみるなり、またお越しください。心待ちにしています。

    さ。

    私も書きましょう・。

    紅 憐 2011/02/09 19:07

  • 空波さん
    ええ、お久しぶりです、とっても。
    一番乗りありがとうございます!
    いえいえ、〝文学喫茶〟の本文は、投稿したあとですよ^^
    ここから、店主の私なり、お客さんとしていらした方々なりが、感想をつけたり批評をしたり、またそれを受けたりして、切磋琢磨するのが〝文学喫茶〟の本文なのです。
    書いただけの自己満足には終わらせない。1000文字で表現しきれなかったこともあるでしょうが、「もっと表現できた(文字数制限がなければ)」という思いもあれば、それを自分のところで活かせますし。

    うちがまだ全盛期の頃は、もっとたくさんの方が早速とばかりにいらしてくださったのですが。

    こほん。
    さて。ここからが私も店主の本分。
    投稿された作品には必ず、私は、感想を残します。だって私のお店だしね。
    各自の作品として自分のページに書いてもらわないのは、本当にただ、鍛錬のみに書くということをしてほしかったから。
    それは私も同様。レビューを求める場所ではないここに投稿されたもの、しっかり読ませていただきます。

    次の書き込みに感想をば

    紅 憐 2011/02/09 18:54

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