携帯を鞄から出し、慌てながら救急車を呼ぼうとすると、一本の閃光が七夜の心臓を貫いた。

「えっ?」

 痛みは全くない。不思議に思ってまだ残像の残る閃光の先は、月。

「な、何? これ…?」

 閃光が血管を伝って脳の記憶を呼び起こす。

「…ひ…め…」

 鏡が割れるように、記憶の扉が開かれる。

 己の使命と共に。

「あたしは…輝夜姫を護る影!」

 額に梵字が浮かび上がり、月はいっそう赤い光りを放つ。

「なな…っ!」

 神楽が痛みを訴えると、七夜は直ぐさま駆け寄り、額に手を当てて何かを唱える。


「姫。我等が美しき姫よ…」

 心配そうな表情で言うと、神楽の顔色と吐息が治まっていく。

 そんな中、神楽は七夜の手の温もりの中で夢を見た。

 運命と絆という狭間に立たされている、己のするべき使命を…。




(あたしは…いにしえの…果たすの。千年の…時を超えて…)