触れて下さい



彼の背中に向かって、小さく呟いた。



聞こえて無いのは分かってる。ただ、口から零れただけ。




いつの間にか滲んでいた涙を拭い、彼に背を向けて部屋を出ようとした。その時。




















「いいの?」





「………え?」





聞こえた言葉に耳を疑う。


足を止め、ゆっくりと振り返る。



椅子を横に向け、私を見つめる彼と目が合った。