「イタタタ…」


と頬を擦りながら


「日本で開く初めての個展に
気合い入り過ぎちゃって
一時期、体壊したんです。


そしたら結構、
余裕って思ってた納期が
ギリギリになってしまって…。」


「それでもメールなり何でも
手段はあるだろうが。」


「すいません…
何か連絡するのが怖くて
私の帰る場所がなくなってたら
どうしようかって不安になってしまって。」


「バカだな。」


そんな事心配してたとは…


オレは心音を抱き寄せる。


オレの腕の中で心音が言う。


「それに
これにかなりの時間を費やしたから…。」


と言って指差す先にあるものは
座椅子だった。


「座椅子?
これがメインの作品か?」


正直、
メインにしちゃ
ちょっと地味な気がするが


しかし、
よく見ると一枚板を
上手くアールに曲げてあり


これだけの柔らかさを
木で表現するには
確かにかなりの時間と労力を
費やしそうだ。


ふと、タイトルに目がいく


『私の帰る場所~大切な人へ』