プレゼン会場のホテルに着くと
須磨さん達はもう到着していた。


一瞬、目が合うと
こちらに軽く頭を下げ
直ぐに資料へと目を落とした。


その雰囲気はどこか、よそよそしく
ピリピリとしたものが伝わってきた。


さすがの須磨さんも
緊張してそうだな。


そりゃ、そうだよね
これだけの大仕事だもん。


業界でも既に話題にのぼってるし


誰だって緊張するよ
普通は


そうーーー


普通はね……


なのに


それに引き換え…








「師匠、師匠!」


小声で隣に座る師匠に
声を掛ける。


「あん?なんだよ?
そんなちいせぇ声で聞こえねぇだろが。」


と、師匠。


「何、言ってんですか。
それ、不味いですよ。
その鼻歌、やめて下さい。
さすがに不味いですって!」


あくまでも小声で師匠に言う。


すると


「何で?」


物凄く普通に返された。


いや、その…


「何でって…」


まだ開始前とは言え、
お偉いさん達も席に着いてるし…


私なんか、さっき、行ったのに
またトイレ行きたくなってきたもん。


それなのに…


どうやら


師匠には緊張の二文字はないらしい。


そう言えばーーー
師匠が緊張している姿って見た事ないなぁ。


何かいっつも飄々としていると言うか…


掴み所がないというかぁ…


緩いというかぁ…


今日だってさ
いつもはラフな服装だけど
ビシッとスーツ着て
めちゃくちゃカッコいいんだけど…


何か緩いんだよね…
実際、既にネクタイ緩めてるし…


いいのかなぁ、こんなんで


何て事を考えていると
進行役の人が前に立った。


さあ、
いよいよ
運命の時がきた!





プレゼンの始まりだ。