―――――… 「まさか電車の中で言われると思わなかったよ」 まさかだよ、本当に。思い返すだけで郁也が謎めいて見える。 そう呟けば、怜香は更に驚きに目を見開いた。 「なにそれ。ロマンチックの欠片もない」 「だよね。ていうか普通あんなふうに言われたら理解に苦しむよね」 「そりゃそうでしょ。なんか藤崎が不思議過ぎるんだけど」 そう言うと、怜香は窓際に視線を向けた。 郁也と夏樹君が、なにか話している。会話は聞こえない。