―――――見なきゃ、良かった。




「…最悪」

「え?」




ぽつりと小さく呟けば。結菜が「なに?」聞き返す。




「…気分悪い」

「ええ、ちょ、なにがあったの?なんか重症だよ友梨」




言いながら、結菜が私の背中を摩った。

俯きがちになっていたからなのか、それとも結菜の目を見ていなかったからなのか、

結菜は私の背中を静かに摩っていた。





「…黒い髪が、見えた」

「え」





ぴたりと、私の背中をさすっていた指先が止まった。

結菜が、その手を動かすことを止めたからだ。