「はぁぁ~……」
部屋に入って、制服のままベッドに倒れ込む。
さっきの颯くんを思い出して、また目に涙が滲んだ。
何であんなこと、しちゃったんだろう。
…でもでも、来るなってヒドいよね?
「クッキー……頑張ったのにな………」
数々の失敗を物語る、指の火傷を見る。
あんなに一生懸命お菓子作ったのなんて初めてだったかも。
料理好きな桃と、大好きなお菓子につられて何となく入った料理部。
まともにお菓子が作れたことなんかほとんど無かったし。
ポロッと零れた涙と同時に、バッグの中の携帯が鳴った。
ノタノタとベッドから降りて、携帯を取り出す。
着信:綾崎颯
その文字に、通話ボタンを押すかどうか迷ってから携帯をベッドに投げた。
軽い音をたてて布団の上に乗った携帯は、しばらくして鳴り止んだ。



