「……何しに来たの」
低い声、怒ってる……?
「えと……会いた、くて」
思わず小さくなる声。
颯くんは立ち止まったきり振り向いてくれない。
「…颯く……」
いつまでも何も言わない颯くんに話しかけると、それを遮るように放たれた言葉。
「あのさぁ………今は来ないで」
言葉が見つからなくて。
足が動かなくて。
頭が働いてくれなくて。
目の前が真っ暗になった気がしたけど、未だ振り向いてくれない颯くんの冷たい背中があたしの目には確かに映っていて。
クッキーの入った紙袋を握る手に力が入った。
ぼやけた視界。
頑張って、頑張って作ったクッキーの紙袋を離した。
紙袋が地面に落ちる、カサッという音はやけに虚しくて。
「何それ………」
泣き顔なんか見られたくなくて、あたしはその場から逃げるしかなかった。



