「10回練習したら、呼びに来い」





速水先輩はドS顔でそう言って、隣の部屋へと行ってしまった。





「先輩、かっこいい」



大きめの独り言。






私は練習しながら、いろんなことを考えた。





あのまま、引越ししなかったら私達はどうなっていたんだろう。



とか……




速水先輩は彼女いるのかな。



とか。






私のこと、どう思ってるんだろうとか。




余計なことばっかり考えて集中できなかった。








速水先輩に関するうわさはたくさんありまして。




どれもうわさだから真相はわからないけど。





他校に美人の彼女がいるだとか。



高校生の年上の彼女がいるだとか。




どれも本当のように思えるけど、多分本当じゃない。






速水先輩は、不器用な人だと思う。



今、吹奏楽部に全力を注いでいる。



恋愛とか、そんなことにうつつを抜かしている暇はないんじゃないかと。





勝手にそう思って、安心したりしているんだけど。