私の声に足を止め、ゆっくり振り返った彼は驚いた表情を浮かべている。
散りかけの桜がヒラヒラと踊るように舞い落ち、彼の濃いブラウンの髪によく映えた。
すうっと息を吸い込んで、両手に力を込めた私は吐き出した。
「…私…三橋さんが、好きです…っ」
……そうだ。好きなんだ。
私は、もうすっかり三橋さんの虜だったのだ。
いつもキラキラ眩しい笑顔で周りを包んでくれて、こちらまで元気になる。
仔犬のように可愛いのに、チラリと覗かせる八重歯が内側にある男を感じさせる。
おっきくて、逞しくて、カッコ良くて。
困ってる人ほっとけなくて、自分ばっかり損して。
なのに、絶対悪口は言わない。
……こんなに完璧で不器用な人、初めて会った。
「…私、三橋さんが好きなんです」
もう一度、呼吸を整えると、騒がしい町に消されないように大きくハッキリ伝える。
しばらくの沈黙の後、三橋さんは小さく口を開いた。
「…それ…ほんと?」
「…ほ、ほんとです」
「あ…そっか…」
フラれるのかな、この感じは。
なんともまぁ気の抜けた声が彼から返って来るから、私は心の中で溜め息を吐いた。
けっこうショックだな…フラれたら。
もうバイト来れないし……。
「……あの、俺でいいなら」
「………へ?」
「…あ、だから俺でいいなら」
「…??何が?」
ん?あれ、話が、状況が理解出来ないぞ?
私は今告白して。で、その返事が“俺でいいなら”?
………んん?

