「俺より、伊吹先輩は大丈夫ですか?」


「わ、私は全然…っ」


「…そっか。なら、よかった」



安心したように、表情を緩ませて。

その笑顔に胸がキューンッと締め付けられた。


……あぁ、ダメだ。ダメだよ。

たった今、この想いは胸に隠しておこうって決めたのに。


もう口から溢れ出そうになってる……こんなんじゃ、ダメだよ…。



「…あり、がとう…」


「…いえ。気を付けてくださいよ?」


「…うん」


「わかればヨシ」



なんて、偉そうに言うくせに。

私の頭をぽんぽん、て撫でる手は優しいんだ。


女はギャップに弱いって言うけど、ほんとにそうだと思う。


いつも冷静な要くんが、あんな風に声を張り上げて慌てるなんて、不謹慎だけど嬉しくて。


期待しそうになる、私はどこまで単純なんだろう。


要くんは私を好きにならないのに。期待したってムダなのに。


……わかってるのに、止まらない。