私は、聖が好きで。

要くんは、柚希ちゃんを好きだと思ってた。


けれど前に聞いたら、『親友の好きな人を好きになる訳ないじゃないですか』って笑って答えたから。


それに少しだけホッとしてる自分と、少しだけ悲しんでる自分がいた。


“親友の好きな人を好きにならない”


それは、私も入る訳で。


私は聖に想われていたし、その時点で私は要くんの恋愛対象から抜けたことになる。


それが寂しくてやけに落ち込んでる私は、もう完全に、要くんに恋をしているのだろう。


でもそれを認めたら、今の関係が壊れる気がして。

よくドラマやマンガで聞く台詞だけど、本当にそう思う。


告白してフラれて気まずくなるより、心に仕舞ったまま、友達として傍にいる方がいい。


だってそうすれば、辛いのは私だけで済むじゃない。


だから、この想いは胸に隠しておくんだ。





「…先輩…っ!」



え……っ?


要くんの叫び声と、後ろから力強く引っ張られる感覚。


腰に回された腕にグイッと引き寄せられ、私は要くんの上に倒れ込んだ。


状況が、分かんなくて。



「…いっ…てぇ」


「…っ!要くん大丈夫!?」



すぐ背後から聞こえた声にハッとすれば、私の目の前には下へと続く階段が待ち構えていた。


ボーッとして、周り見えてなかった。

……あ、危ない……。


私を支えた要くんは、すっかり私の下敷きで。

慌てて退き、苦笑いを浮かべる要くんを見た。



「ごめん、周り見てなくて…大丈夫?」


「…大丈夫です」



ゆっくりと体を起こし、立ち上がってズボンをはたいた。