「あ、要くんじゃん久しぶりー!」


「お久しぶりです♪」


「何で最近来なかったのー?あたし達寂しかったんだけど~」


「あははすんません。ちょっとヤボ用で」



………来た。

そう思ったのと同時に、ガタンッと前の席のイスが引き出される音がした。



「こんにちは伊吹先輩っ。元気でしたか?」


「…どーも要くん。今日もモテてるね」



頬杖をついて、フゥッと息を吐き出す。

要くんは、少し首を傾げて私を見る。



「そんなこと無いですよ。ただ、女の子はみんな友達ですから☆」


「…寒」


「ひどっ!」



大袈裟にリアクションする要くんを横目に、私はまた小さく溜め息を吐いた。


要くんは最近、よくうちのクラスに来る。

只でさえモテるっていうのに、要くんは特に歳上人気が半端ない。

当然、目を付けられるのは当たり前で。


話し掛けてくる下心見え見えな子達にも、彼は笑顔で対応して、その上楽しませてくれるのだから、もっとファンが増えるのもわかる。


でも困るのは、私で。

要くんはなぜかクラスに来る度に私の元へ。


最初は雑談してるのが楽しかったけど、最近はどうも気持ちが落ち着かない。


周りの視線だけじゃなくて、私自身の心がザワザワと音を立てているのだ。


だから私の悩みはこれ。

要くんは、どうして毎日ここに来るのだろう。


聞きたいけれど、どこか怖がっている私がいる。