「じゃあ、アイツは?」



一人の女子を指差す友達に、俺は浮かんだ名字を口にした。



「…佐藤」


「はい残念不正解。あれは遠藤です」


「…似たようなもんだろ」


「いや、違うね。じゃあアイツは?」



その後、クラス全員の女子を順に指差し、俺はその度に答えるはめに。


だけど空しいことに、合っていたのは立本とその友達の熊谷美喜だけという結果。


こんな結果を見せられちゃ、友達も何が言いたいのか感じ取れる。



「ほれみろ。立本と立本に関係する奴だけ覚えてるじゃねぇか」


「…それは立本が話してくるからだよ。美喜ちゃんがね~って」


「ふぅん?女子の話になんて興味無いお前が、女子と話してるだけじゅーぶんスゴいけどな?」



だから何だって言うんだ。

心の中で悪態をついてみたけど、否定しきれない自分に気が付いた。


……俺が、立本を……?


そんな、あり得なかった。だって女に興味が無くて、15年間生きてきた俺が。

たった一度、褒められただけの女の子に。



「…いや、ないわ」



そうボヤきながらも、目の端に映った立本に心臓が高鳴った。


……いや、ほんとにあり得ないから俺……。


まさか、好きになるなんて。

どうせなら、気付かないでいたかった。



だって、所詮叶わないのに。