――――恋なんて、自分とは無縁だと思ってた。




「見て美樹ちゃん!かっこいー!」



入学して1ヶ月。

入部した弓道部で初めて的を射った日、アイツはやって来た。


弓道場のすぐ横は普通に道路で、柵の向こうから、こちらに向かってそんな声を上げる女。


弓道は精神を統一してする競技なのに、平気で騒ぐソイツ。


俺はイライラして、睨むようにその女を見た。



「あっ…睨まれちゃった」


「あったり前でしょー?それだけ騒げば。ほら、行くよ」


「ごめんなさい…。…あっ、カッコ良かったよ松川くん!」


「……っ!?」



去り際、友達に腕を引かれながらソイツは叫んだ。

思いっきり、俺の名前を。


驚いて動揺して、次に放った矢は見事に的を外したけど。


なぜか、ソイツの顔が頭から離れなかった。



どこかで見たことがあるけど、分からない。

元々女の子に興味が無くて、いまだにクラスの女子の顔さえ覚えていない。


ただ、アイツが俺の名前を知っていたところを見れば、何か関わりがある奴には変わりないんだけど……。


考えれば考えるほど、さっきの女の顔が鮮明に頭に焼き付いて。


一方的に怒っちまったし、明日学校で探してみっか…。


なんて、俺らしくないことを考えていた。