「…ほら、寝ないと熱上がるよ」


「…もう十分山田くん熱上がってるので今さらです」


「どんなことだよ」



この人といると、気持ちが軽くなる。


そんなのは、初めてで。

多分、これが本当の“好き”なんだろうなって。



「はい、寝て」


「…何かバカにされてる気がする」


「はいはい」


「…はいは一回だよ山田くん」


「はいはい。わかったから寝て。明日学校来れないよ」



くだらないのに、胸が温かくなる。

これ、完全にこの人のペースだよね。



「…それは嫌だ」


「…ふっ。なら、早く寝…」


「あっ。でも…」


「……? 」



ベッドに横になって、俺を見ていた柚希が急に大人しくなった。


柚希の言葉を待つように、首を傾げる俺を真っ赤な顔で見つめて、



「…でも、風邪引いたらまた山田くん来てくれるよね?」


「……っ」



…あ~あ、これは完璧、この人のペースだ。


ほんとにこの人は、不意打ちが得意だよね。

突然爆弾発言をするから、結局慌てるのはこっちの方で。


それに本人が気付いてないのが、何よりイタイ。