部屋の前に着き、コンコン、とドアをノックした。

中から返事は無くて。



「…柚希?起きてる?」



声をかけてみるもやっぱり返事は無い。

寝てるのかもしれないし、入るの悪いな。


どうしょうか、と悩んでいると、ちょうどなっちゃん…が、階段を上がってきた。



「あれ、柚希寝ちゃってる?」


「はい。えっと、起こすと悪いので今日は帰…」


「え?起こしちゃえばいいのよそんなの」



…………はい?


発せられた言葉を理解しようと励んでいる間に、なっちゃんはドアを開け中に入っていった。


え、ま、マジですか?


なっちゃんは柚希の寝ているベッドの脇まで行くと、強引にその体を揺らした。



「柚希、起きなさい。山田くん来てくれてるのよ」


「…んー……お母さん、じゃん…」


「違うってば!山田くん来てるの!あなたの大好きな山田聖くんが!」


「…………なにっ!!?」



ガバッ!

まさにそんな効果音がぴったりな勢いで、飛び起きた柚希。


そしてドアの所に立つ俺に気付くと、瞬間大きく目を見開いて顔を赤くした。



「ほ、ほんとに山田くんじゃん!お母さんのバカ!先に言ってよ!」


「だから言ったじゃない。山田くんが来てるって」


「うあ~っ。思いっきり寝起きなのにぃ~…」



お母さんの体に隠れるようにして、急いで髪の毛を手ぐしで整えているのが見える。



「…ぷはっ」



その必死な姿が面白くて、思わず笑ってしまった。