「はーい?…あら、あなたは?」
開いたドアの向こうから顔を覗かせたのは、緩くウェーブのかかった茶髪が揺れる女の人。
少し目尻の垂れた瞳が、柚希そっくりだと思った。
「…こんにちは、初めまして。柚希さんとお付き合いさせて頂いてる山田聖と言います」
そう言い、ペコリとお辞儀をした。
この人、柚希の母親だ。
顔を上げ目が合うと、ニコッと柔い笑みを浮かべた。
「あなたが噂の山田くんね!いやぁ~本物!柚希に聞いてた通りカッコいいわ~」
ニコニコ笑いながら、俺の肩をベシベシ叩く。
すごい…やっぱり親子だ。テンションがそっくり。
つい、小さく笑みが零れる。
「わざわざお見舞いに来てくれたのね、ありがとう!柚希二階の部屋にいるから、行ってあげて」
「はい、お邪魔します」
「あっ、山田くんのこと聖って呼んでいいかしら?私のことはなっちゃんでいいから!」
「……はい?」
「昔からのアダ名なの!なっちゃん!」
「…あはは…わかりました。努力します」
「フフフッ。やだぁ~お母さん照れちゃうな」
最後にもう一度肩を叩いて、鼻唄を歌いながら奥へと行ってしまった。
…という感じで、柚希のお母さんをなぜかなっちゃんと呼ぶことになり。
お母さ……えーっと、なっちゃんが教えてくれた柚希の部屋に向かう。