「……柚希さん?」



ドクンッ。


今、一番聞きたくない声で、名前を呼んで。

今、一番会いたくない人が、そこに立っていた。



「…香里奈ちゃん」


「こんにちは」



柔く微笑みながら、ジャージ姿の香里奈ちゃんが歩み寄って来る。


あたしはその姿を、睨むようにして見つめ返した。



「どうしたんですか?こんな所で」


「…仲直りしに来たの。山田くんいる?」


「仲直り?あぁ、結局ケンカしたんだ~」



……え?

嘲笑うかのような言い方の香里奈ちゃんを、あたしは見つめた。



「この前はごめんなさい。山田先輩借りちゃって」


「…悪いと思うなら、最初から手出さないでもらえませんかね?」



ここで、引いたら負けだ。

あたしはグッと足に力を入れ、少し驚いた表情の香里奈ちゃんを睨んだ。


香里奈ちゃんは強気なあたしに、はぁっとわざとらしく溜め息を吐く。