まるで促すように、松川くんが言葉を繋ぐ。

あたしはそれに乗って、何度も頷いた。



「にしても香里奈には困ったもんだな」


「でも…わかるよ。好きだから、振り向いて欲しい気持ち」



あたしだってそうだった。


山田くんと付き合う前、片想いの頃は、必死で山田くんと関わりを持とうと励んでて。


ライバルの存在も、相手にとっての自分の位置も、色々悩んで迷った日がたくさんあった。


少し、こちらを向いてくれたと思ったら、本当は本の1ミリも傾いていなかったこともあった。


恋なんてそんなのの繰り返しだ。


期待して、裏切られて。
裏切られて、期待して。

それを何度も繰り返しながら、一歩一歩、見えない距離を確かに進んでる。


香里奈ちゃんも今、その道の途中なんだ。




「そういうとこ、立本らしいよ」



そう言った松川くんは、とても優しい目をしていた。



「ライバル庇うなんて、柚希くらいね」


「…あはは」


「良く言えば誰よりも相手を理解して、悪く言えばただのお人好し」


「六花ちゃんが毒を…!」


「…でも、そこが柚希ちゃんの良いところ!」


「…そうだな」



え。え。え。

笑ってあたしを見つめる三人に、あたしは戸惑ってあたふた。



「みんなが優しいとか怖いんだけど」


「そこは素直に受け取れよな」



松川くんまであたしを誉めるだなんて。

失礼だけど、明日は雪かい?


嬉しくせに、恥ずかしくてそんなことを考えた。