え……………?



一瞬、言われた事が理解出来なくて。


騒がしいはずの雨音が、嘘みたいに遠くに消えてゆく。


しばらく呆然として、やっと出た言葉はこれだった。



「…意味、分かんない…」



香里奈ちゃんと一緒にいるってどういうこと?

何で一緒にいるの?

あたしとの約束はどうしたの?

どうして今さら電話してくるの?

もっと早く出来なかったの?


ぐるぐるぐるぐる、そんな醜いあたしが現れて気持ち悪い。



『駅に行く途中で、香里奈に会って。その時、香里奈一人で泣いてたから、声を掛けたら熱があって…。まだ時間に余裕もあったし、香里奈を家まで送ってたんだ』



それで何でこんなに遅くなるの?
遅れるならもっと早くに電話出来るでしょ?



『…本当にごめん。遅くなって』



山田くんの、いつもよりワントーン低い声が耳に届く。


山田くんが心から謝ってるのは分かるよ。でも、どうしても、醜いあたしがいるんだ。


家送るだけで一時間も掛かる?

どうして携帯通じなかったの?

二人で何してたの?



疑いたくないのに、そんな酷い言葉が波のように押し寄せる。


どんどんどんどん、止まらなくて。
気を抜いたら、口から溢れてしまいそうになる。



「…香里奈ちゃんと会ってて遅くなったんだ…」


『…え?』



分かってる。熱があったんだもん。優しい山田くんが放っておける訳がない。


でも、何だろうな。あたし心狭いのかな。


“あたしより香里奈ちゃんを優先したってことでしょう?”


……あたし、最低だ。